クロード・シャブロルの死 山田宏一(映画評論家)さん

ヌーヴェル・ヴァーグの中核となった映画研究誌「カイエ・デュ・シネマ」の批評家から先陣を切って映画監督に進出したクロード・シャブロルの訃報が伝えられました。享年80歳。ヌーヴェル・ヴァーグの旗手として20代に「美しきセルジュ」(57)、「いとこ同志」(58)、「二重の鍵」(59)、「気のいい女たち」(59)と、いま見てもすばらしい鮮烈な傑作を撮りつづけますが、その後は自ら駄作よばわりする作品もふくめて何でも撮って(といっても、すごい傑作もたくさんあります)同じ「カイエ派」の、つまり「カイエ・デュ・シネマ」誌出身のジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーとは対照的に、商業主義に妥協した、「作家(auteur)」としての誠実さを失った監督とみなされがちでした。なにしろ、50年間に55本の長篇映画とその他に短篇も数々撮り、21本のテレビ映画も撮っているとのこと。フランスのサルコジ大統領はヌーヴェル・ヴァーグのファンで、クロード・シャブロルの精力的な活動を奔流のような創作力で超人的な多作ぶりで知られる19世紀の文豪バルザックにたとえて追悼の讃辞を述べたそうです。多作のクロード・シャブロルについての「作家論」を書くのは至難の業のようですが、大久保清朗氏がすでにその不可能への挑戦(?!)を試みており、何らかの研究を準備進行中のはず。期待したいところです。