DVD「地獄の英雄」 山田宏一(映画評論家)さん

地獄の英雄 [DVD]

まるでチリ鉱山落盤事故の報道ぶりをいち早く、あざとく描いたような、ホットな時事的迫真性のある映画です。といっても、じつは1951年のビリー・ワイルダー監督の白黒作品。DVDで発売されました(ジュネス企画)。事件をでっちあげるために巧妙にあくどくふるまうカーク・ダグラス演じる主人公のジャーナリスト像も、これまたあざとく大阪地検特捜部の押収資料改ざんの張本人みたいに描かれます。三面記事的な妙に生々しい不快感の漂う映画で(1925年に洞穴に閉じこめられた男についての実話で、ニュースが伝わると野次馬が集まってカーニバルのような雰囲気になったというスキャンダラスなお祭り騒ぎを映画化したもの)、陰惨でドラマチックな結末は、赤狩りではじまる戦後のハリウッドの暗い傾向を象徴しているかのようです。
ウディ・アレンが最も愛したビリー・ワイルダー作品とのこと。というところで、「ウディ・アレンの映画術」(エリック・ラックス編著、井上一馬訳、清流出版)という、ぶ厚いインタビュー集にもふれたいのですが、まだ読みきれずにいることを告白するにとどめておきます。

ウディ・アレンの映画術
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