高崎俊夫(編集者)さん 山川方夫のエッセイ集を編集中

三十五歳という若さで交通事故で不慮の死を遂げた山川方夫のエッセイ集(清流出版)を編集しています。三田文学の名編集長として、江藤淳に「夏目漱石論」を書かせてデビューさせ、『愛のごとく』ほかの恋愛小説の名作、ショートショートの名品『親しい友人たち』で知られる山川方夫は優れた映画批評家でもありました。
アントオーニの『情事』とアラン・レネの『二十四時間の情事』の鋭い批判、そして『妻は告白する』の若尾文子をめぐって見事な批評を展開した増村保造論は、出色の面白さです。さらに同世代の『虚栄の市』でデビューしたばかりの若き日の中原弓彦小林信彦)を描いたポルトレも秀逸です。
冬樹社、筑摩書房の全集はあまりに高価で、古本屋でも入手困難であるため、これを機会に、夭折の作家、山川方夫のエッセイストとしての魅力を再発見してほしいと願っています。