まつかわゆま(シネマアナリスト)さん 「ゲゲゲの女房」のこと

 追加、といっちゃなんですが、一番とは言えないけれど「ゲゲゲ」も結構好きでした。
 哲学者・内山節さんの「日本人はなぜきつねにだまされなくなったのか」という本を読みまして、日本が、日本人が、日本文化が、日本列島文明が、徹底的に変化したのが1965年であったという説に納得したんです。
 で、「ゲゲゲの鬼太郎」が週刊マンガ誌連載始めたのが65年なんですね。
 おとなたちは変わってしまったけれど、子どもたちは"怪"をみられたんです。でも森もカミサマも無くなってしまった65年に、子どもたちはそれを漫画に求めた。で、ヒットして、テレビ漫画にもなった。何年かに一度、子どもたちはなくなってしまった"怪"をもとめて鬼太郎を呼び戻す。
 その繰り返しが"妖怪ブーム"や"水木しげるブーム"になるんじゃないですかね。
 それと、私はテレビ版みてないですけど、映画版では何回か繰り返された「貧乏では死にませんから」というセリフ、大事だと思います。"戦争では死ぬけど、貧乏では死なない(最近、死んでますが)"これって、水木しげるの一番言って欲しいことだと思います。戦争だけはもう絶対しちゃいけないんだ、ってこと。それを汲んだセリフを入れたことだけでも、私はこの映画版「ゲゲゲ」を評価したいです。